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月刊☆臥看牽牛織女星

15年の空白を経て宝塚観劇を再開。失われた時を取り戻すためのスカイステージ鑑賞記録をぼちぼちと綴ります。

扉を静かに閉める女「エイジ・オブ・イノセンス-美徳の微笑-」

宙

 

好きな俳優ダニエル・デイ=ルイス主演の映画なので
見たはずなんだけどなぁ。

 

メイを演じたウィノナ・ライダー
ちょっと違うんだけど~といった感じがあったような記憶が
かすかにあるのだけど。
ストーリーとか全然思い出せない。

 

ダニエル・デイ=ルイスが演じた
アメリカ上流階級の青年ニューランドは、ゆうか(椿火呂花)
いやぁ、でもこのニューランドという青年。
カテゴリー的にはダメ男ですよね。
ダメ男フェチにとっては、なかなか好きなタイプの舞台でした。 

自由人の友人達とも交わり
進歩的な考えも持ちながら
それがいざ自分の身にふりかかると
保守的な階級社会の中から飛び出すことが出来ない。
カゴの中で窒息する~~~と苦しんでいるけど
カゴの外では生きていけないでしょ。この人。

 

そんな彼の本質をきちんと見抜いているのが妻のメイ。
演じたまちゃみ(美羽あさひ)は、なかなかの好演だったと思います。
何一つ申し分のない、心根も清らかで美しい妻。
だけど、鈍感力とでもいうんだろうか。
なんとなくイラっとさせられる。
ニューランドが窒息する気持ち。わかる。わかる。

まちゃみは「逆転裁判」や「バレンシアの熱い花」などで
蘭寿さんの相手役を度々つとめ、
2番手格といってもいい娘役さんだったけれども
「薔薇に降る雨」で退団。

個性の際立った娘役が多いような気がする宙組の中において
この、どこか靄のかかったような曖昧な雰囲気が、
もう一つ、突き抜けられなかった要因だったのかしら。
こういう大人可愛い娘役というのは、なかなか貴重なのになぁ。

 

物語が進むと、夫の心が
伯爵夫人のふーちゃん(ふづき美世)にあることを察していながら、
彼の前では鈍感を装っている事が垣間見えてくる。
いや、装っているわけではないな。
鈍感であり続け、
真綿の中で窒息しながらも生きることが、
彼らの階級の生き方なわけで。
けっして悪役ポジションではないのだ。 

まぁ、人によっては悪役って思うかもしれないけど。
絶妙のタイミングで妊娠告げて、
一生彼をカゴのなかに閉じ込めるわけだから。
でも、お互いにカゴの中でしか生きられない事を知っているのだもの。

手に入れたとしても、彼の自由な心は永遠に失われるとわかっていながら
自分自身と、なにより彼を守るためにも
外に通じる扉を静かに閉める。
夫婦でいながら、それぞれに片恋という道を一生歩むわけですから。
ほんと、辛くて、難しい役。

 

幕切れのアコーディオン弾き、きのみ(風輝マヤ)の歌が素晴らしく、
叶うことなく流れ去ってしまった片恋の数々を思って
静かに涙が流れました。

いい作品だったわ。