月刊☆臥看牽牛織女星

15年の空白を経て宝塚観劇を再開。失われた時を取り戻すためのスカイステージ鑑賞記録をぼちぼちと綴ります。

あなたなしでは生きてゆけない「愛と革命の詩」-アンドレア・シェニエ-新人公演

花

相変わらず続く花組熱。「MY HERO」で最強コンビとなったキキちゃん(芹香斗亜)、ひらめちゃん(朝月希和)主演の新人公演CS鑑賞。

定期的にDVDを見たくなるほど好きな作品「愛と革命の詩」-アンドレア・シェニエ-。
今はいいね~DVDだから。ビデオ販売はいつから始まったんだろう?ヤンさん(安寿ミラ)の退団バウ公演のビデオは友達が貸してくれたっけ。それより昔は時々テレビ放送してくれた劇場中継を録画したビデオテープだけ。好きな作品ほどビデオテープが切れて二度と見ることが出来なくなるという悲劇が…。

ユディット=まあやちゃん

この新人公演を見る目的のひとつが、まあやちゃん(真彩希帆)。
もう、花組に配属されてるよね。確か。
まあやちゃんが演じたのはひらめちゃんが演じた少女ユディットでした。

いや、まぁ。当然ながら、上手いわ。
ただ、なんかちょっと芦田愛菜ちゃんみたいだった。
まず賢い。子供ながらに賢すぎて、ちょっとあざといかも。時代に翻弄される人々のうねりの中の一人としては少し突出した感じがあった。
なんとなくチグハグ感が生まれてしまったのは、おそらく、その高いスキルを惜しみなく全力で披露するまあやちゃんと、まだまだ発展途上中の新公学年の男役とでは、やり取りにバランスの悪さが感じられてしまうからなのだわ。
でも、これからは、同じく容赦なく全力芝居のダイモン(望海風斗)とコンビを組むことになるわけなので、丁々発止!ちょうど良いバランスになるかもしれません。

それに、もう一つ、まあやちゃん天使だけど、けっして子役タイプではないのね。大人の芝居のほうが彼女の良さが活かされるのではないかしら。
琥珀色の雨にぬれて」のシャロン。期待しましょう!

マッダレーナ=ひらめちゃん

ユディットはこのフランス革命下にはザラにいたであろう不幸で一人ぼっちの少女。不幸が過ぎて自分自身の頭では考えられなくなった恐怖政治下の人々の雰囲気が、ひらめちゃんは上手かったな~。
というわけで、新人公演のマッダレーナのひらめちゃんも、とても良かった。
教会でアンドレア・シェニエと再会したシーン。泣いてしまった。何度も何度もDVDを見ているけど、ここでは泣いたことは一度もなかったのに。

もちろんランちゃん(蘭乃はな)のマッダレーナも大好きだよ。新人公演を見て気がついたのだけれど、今思えばランちゃんのマッダレーナは生命力にあふれていたんだわ。一度は死を考えたマッダレーナが生きる喜びを手に入れた、その幸福感。
だけど、ひらめちゃんのマッダレーナは少し違った。感じたのは喜びよりもこれまでの辛さ。そして、なにかにすがることなしでは1日も生きていけない、そんな危うさ。切なくて涙が流れた。
彼女がアンドレア・シェニエとともに断頭台に登ることは必然だったのだとストンと納得が出来た。

仲良しのヅカ友はこの「愛と革命の詩」が苦手と言っていて(どうも植田景子先生作品全般が好みではないらしい。)その理由のひとつが、マッダレーナが生きることを選択しなかった事のよう。
私は、フランス革命の時代を舞台にしたこの芝居に現代の「生命は大切」という感覚を持ち込むのはどうかと思うので、そのあたりは全然気にならなかったのだけれど。
今思えば、生命力溢れるランちゃんのマッダレーナが死を選択することに、なんとなしの違和感を感じた友人の感性も理解できるかな。
日本人の感性にしっくりくる、ひらめちゃんの情感あふれる切ない芝居だったら彼女の感想もまた違ったかもしれません。
もちろん生命力と幸福感にあふれたランちゃんが蘭寿さんのアンドレア・シェニエとともに断頭台へと向かっていくシーンは、それはそれは美しいシーンで大好き!たとえ結末が死であっても、生きる喜びを歌い上げるドラマチックでロマンチックなイタリアオペラが元になったこの芝居の世界観にピッタリだと思う。

アンドレア・シェニエ=キキちゃん

そしてキキちゃん。
先日の「MY HERO」では、輪郭がシャープになっていて精悍さが増していたけど、この時はまだほっぺのラインが丸いのね。
この役は動乱の時代、詩人であるがゆえ特に何かをするというわけではないので、逆になによりも真ん中力が求められると思う。新人公演で一番難しいのはこういう役だよね。
キキちゃんは強烈に発光するタイプではないのだけれど真ん中にいて、違和感はないのだ。
ふんわりといるのに、ただそれだけでいいという甘やかさ。

こういうあまり色濃くないタイプは2番手としては、若干物足りなく思えることもあるかもしれない。観る人を狂わすような得体の知れない魔性のようなものも今のところまだない。
けれど、キキちゃんはただ真ん中にいるだけで清く正しく美しくを体現することができる貴重な人だと思う。こういう人って今の時代、いそうだけれどなかなかいないのよ。
そしてこれは将来のトップスターとして何より大切な特性であると思う。