月刊☆臥看牽牛織女星

15年の空白を経て宝塚観劇を再開。失われた時を取り戻すためのスカイステージ鑑賞記録をぼちぼちと綴ります。

快作「オグリ!」1

花

「オグリ! -小栗判官物語より-」をCS鑑賞。これまたすごく面白かった!!ヤンヤヤンヤ!!

いえ実はね。開始1分で音楽が長谷川雅大だぁと気がついて、いきなりがっくりしてしまったのだよ。モーツァルトベートーヴェンの音楽の違いも聞き分けられない私でもわかってしまう長谷川先生ってなんなの?

曲は全くいつもの通りです。山もなければ谷もない。全然展開していかない。一旦一旦終わってしまうような感じ。
ですが、今回に限りあまり気になりませんでした。
寺か神社の縁起を説教節として村人に語って聞かせるという室町時代あたり?の庶民の芸能をストーリーテラーとして小栗判官照手姫の物語が展開するので、訥々とした曲調がよくあっていたんだと思います。


幕が上がると、えらいリアルで巨大な馬の頭部が舞台中央奥から舞台真ん中くらいまで飛び出して見える。
度肝を抜かれました。そしてすごく好きです。
でもしばらくの間はこれが気になって芝居が頭に入んなかった。子供が泣くレベルよね。
装置は大田創先生。
「黒蜥蜴」の人だ!あの時も巨大屏風とか巨大ヴィーナスの背景がありましたっけ。もう全部大好きな装置だった。

オグリでもこの後、妙にリアルな巨大手のひらが出てくるなど相変わらずのシュールっぷり。これがまぁ作品と良く合っている。
そんなわけで、曲を聞いて一旦下がったテンションが一気に上昇!


でも一番の功労者は間違いなくえりたん(壮一帆)!
宝塚らしからぬ華やかさにかける音楽も、とんでもびっくりな装置も、全部まるっと自分の世界にして舞台に君臨。すげ~~~!

72人も嫁さん取っ替え引っ替えで、挙句の果てに大蛇と契って、だから何?って感じ。でも納得できちゃう。
人を食らうほどの凶暴な馬を目の前にしても、何の葛藤もなくスリルを面白がれる神経の太さ。
そんな奇っ怪キャラをスパッと演じられるなんて、えりたんって不思議な人だなぁ。

女性が演じる以上、男っぽくはあっても繊細な内面を表現する方向に行きがちな男役という世界。
ところがえりたんって細身でとっても端正な見かけに反して豪胆なんだよね。
だからといって本物の男の豪胆さとは違う。ちょっと不思議な豪胆さ。
スコーンと真芯でボールを捉えるような気持ちよさ。

宝塚観劇から長く遠ざかっていたのでえりたんのことは下級生時代のロケットのかすかな記憶くらいしかなく、だからその後どんな役を演じたのかは全然知らなかった。
麗しのサブリナ」で観劇を再開したのだけれど、その頃のえりたんには、どうも何かがしっくりこない思いを感じていたのだわ。
なんでもござれの懐の深い人だから、何を演じてもそれなりにこなすことはできる。でもなんだかわからないけれど、なにかがハマらないもどかしさを感じた。

で、ようやく「サン=テグジュペリ」のキツネでスコーンとハマったの!
えりたん、おもしれ~~~。すごいわ。この人!!
そこからのえりたんを観るのは楽しかったな~~。

けっしてタイプではないと思われたベルばらのフェルゼンも、実にえりたんのフェルゼン。
よく考えればフェルゼンってとんでもなく迷惑な男だよね。初めて気がついたよ。でも恋ってそういうもんじゃない。甘い二枚目の悲恋ではないのだ。
新たなフェルゼン像が実に魅力的だった。

一転して「Shall We Dance」は平凡なサラリーマン。宝塚で描くには最も難しいストーリー。
どこか一癖ある個性を持ったえりたんがサラリと普通に演じるところに魅力が生まれたのだと思う。

そしてサヨナラ公演の前田慶次はえりたんの真骨頂。痛快な傾奇者!
気持ちよかったな~~~。
この「オグリ」で演じた役へのオマージュ的な意味合いもあったのだね。馬も出て来るし。

そんなわけで、若手時代のこんなにも気持ちよくハマった快作を見ることができ、このスコーンとハマった時の爽快感をあらためて体験することが出来て、ホント嬉しかったわ~~。