月刊☆臥看牽牛織女星

15年の空白を経て宝塚観劇を再開。失われた時を取り戻すためのスカイステージ鑑賞記録をぼちぼちと綴ります。

本日「ハンナのお花屋さん」観劇2 クリスとミア

花

本当に切なくって美しくって楽しい舞台でした。
セットが綺麗~~。花屋さんの色合いも、デンマークの森も優しくって心あらわれる。季節がめぐり矢車草が咲いた時には本当に感動した。


そしてとにかく、みりおちゃん(明日海りお)のクリスが素敵過ぎる。

母譲りの感性、父譲りの品格。
イケメン、高学歴、高収入。
フローリストとして才能に溢れ、仕事はすこぶる順調。
スタッフにも友人にも恵まれ、どうやら恋人にはフラれたらしいけど、偶然知り合った移民の女性の事が心配でならなくなるという心優しさ。

いやもう、こんな素敵な人、あり得ないでしょ。
あり得ないんだけどそれが絵空事にならないところが、みりおちゃんの芝居の素晴らしいところだと思う。
ハートがあるんだなぁ。


ゆきちゃん(仙名彩世)はロンドンに出てきたばかりのクロアチア出身のミア。
正式なワーキングビザがなく不法就労をせざるを得ない最下層に位置する移民という役なので宝塚のヒロインらしからぬ地味な衣装だし、出番も多くはない。
ひとときの夢の世界に浸りたい人は住む場所にも困るような女性なんてわざわざ観たくないって思うかもしれない。

でもこういう難しい役が出来る人、そしてその役を観客が共感・共鳴できるまでに表現できるのは、ゆきちゃんだからこそ。

辛い過去ゆえに優しくされたら崩れ落ちてしまうからと、クリスの親切を頑なに退けて一人、ただ一人必死に日々を過ごす女性をリアリティを持って表現。
やっぱりゆきちゃんの芝居は素晴らしい。1幕終盤の歌も胸をえぐられるほど圧倒的。

出番が多い少ない、とか
衣装が豪華かどうか、とか
そういうことでは測れない役の素晴らしさというものがあると思う。


なんといっても、みりおちゃんの相手役というのは本当に難しいと思うの。
みりおちゃんの芝居は繊細で心に沁みるのでキャピキャピと幼く見えるような年若い相手役さんでは物足りない。
かのちゃん(花乃まりあ)は年の割には大人っぽかったし芝居力もあったからよかったけれど、彼女より学年が下の娘役さんではさすがに無理でしょう。
やっぱり、それなりに大人の相手役がいいです。

ゆきちゃんは芝居も、芝居心溢れる歌も上手いし、背の高さもちょうどいい。
とはいえ、もし同じ階級、同じくらいの年齢の設定で絡みも多いとしたら、大人っぽい娘役さんではみりおちゃんよりもきっと年上に見えてしまうこともあるでしょう。

となると、今回の芝居のように、
かたや、デンマークの裕福な家の出身でビジネスも成功した一見苦労知らずの青年。
かたや、内戦の辛い記憶を抱えロンドンに出てきたものの苦労を重ねている移民の女性。
というように身分や境遇がまるで違っていて、しかも絡みが少なく物理的に距離感がある設定というのは本当に良く考えられているなぁと思います。

それにゆきちゃん、お化粧も表情もすごく工夫をしている。
みりおちゃんは自分の行く道が見え始めた30代前半。
ゆきちゃんは苦労をして大人びては見えるけれど、まだ迷い道をさまよう20代。
ちゃんとそういうふうに見えたもの。


確かに芝居の中で二人の接点は少ないかもしれません。
でも、心に抱えた重荷を少し軽くした二人がようやく同じ場所で静かに微笑むラストシーン。
新しい二人の物語がここからきっと始まっていくのね。
そんなふうに感じられる余韻のあるエンディングは美しくて、優しくて。
とても幸せな気持ちになれました。