月刊☆臥看牽牛織女星

15年の空白を経て宝塚観劇を再開。失われた時を取り戻すためのスカイステージ鑑賞記録をぼちぼちと綴ります。

今なればこそ「凱旋門」観劇2

雪

エゴとかやせ我慢とか優柔不断とか、そういう男のどうしようもなさが描かれる柴田先生の脚本。
ダメ男好き(もちろんあくまで観賞用)の私にとっては大好物!なんです。

初演は青年ラヴィックだったのかな?18年の時を経て同じ役を演じるいしさん(轟悠)ですがさすがに青年、というふうには見えません。
ちゃんと中年にさしかかったラヴィック。
でもそれがいい。

愛する人を失い、収容所で人間の尊厳を奪われ、そこから逃れはしたものの不穏な空気が忍び寄り始めたパリに身を潜める未来のない生活。
本気の恋もしない。もはや人生に喜びはない。乾いた日々。

そんな黄昏色の世界に突然現れるジョアンという女。
蘇る情熱。
「この凱旋門が証人よ。」
無邪気であさはかな年若い恋人。黄昏のパリが美しく瞬き始める。でもそれは消える前の一瞬の輝きだったのかもしれません。

お前よりも美しく、お前よりも優しく、お前よりも誠実な女はいくらでもいるのに。
人生経験も分別もある男が陥る恋は若者のそれよりも深い暗闇かもしれません。

愛して、見下して、でもやっぱり愛しているというダメ中年男ぶりがなぜだか美しい。
馥郁とした香りを放つ古酒の味わいとでも言いましょうか。

ラスト、暗闇に沈む凱旋門に涙しました。
この「凱旋門」の世界には美青年より、人生の終盤というものが視界に入り始めた美中年のほうが似合うような気がします。