月刊☆臥看牽牛織女星

15年の空白を経て宝塚観劇を再開。失われた時を取り戻すためのスカイステージ鑑賞記録をぼちぼちと綴ります。

亡命者たち「凱旋門」4

雪

ラヴィックの物語と並行して亡命者たちの日々も描かれています。
これらの亡命者の人たちは点描のようで、ドラマティックな流れとして詳しく描かれているわけではないのだけれど、物語に奥行きを与えていました。

あーさ(朝美絢)とみちるちゃん(彩みちる)のカップルが愛おしかったなぁ。
年若い二人は一見したところこの物語の唯一の希望のようにも見えるのだけれど、あーさ演じるハイメにはふとした翳りを必死で押し殺している雰囲気が感じられたの。

スペイン内戦。
「誰が為に鐘は鳴る」にも描かれた酷い戦い。
彼がどのような道をたどってパリへ逃れてきたのかは詳しく語られてはいないけれど、悲惨な体験であったことは間違いありません。

その傍らにいつもいる、みちるちゃん、めっちゃかわいい!
さりげなく、でも必死の力を持って体と心が傷ついた幼馴染を支えているのが見て取れた。
音楽は癒やしだよね。健気だわ~。
あーさのどこか張り詰めたような表情が次第に柔らかくなっていくように感じられました。


ユダヤ人のヒンダー一家。
息子役のかのちゃん(潤花)の天真爛漫な笑顔も癒しでした。声もとっても無垢で可愛い!そして、あす(久城あす)ときゃびいさん(早花まこ)夫婦のいたわりはこの物語の根底に流れる愛と恐れの姿でした。
あぁ、その後どうなったんだろうこの家族。


亡命の希望が絶たれて自殺するまなはる(真那春人)
若いイケメンと不倫に走ってしまった妻のひらめちゃん(朝月希和)
何よりもゴッホの絵を偏愛するひとこ(永久輝せあ)
生き延びるために仲間の亡命者の情報を売ろうとするカリ(煌羽レオ)
みんなどこかが欠落した、心の弱さが感じられるある意味人間らしい人たち。
短い出番でも一人ひとりの造形はしっかり伝わった。


そして、ボリスのだいもん(望海風斗)
これまで、ギラついたり、ぐわ~~~っと爆発するような役が多かっただいもんが、どこか達観したような傍観者の役。
本当はね。いしさん(轟悠)とがっぷり四つでビシバシ対決するような芝居が観たかったの。
初演より見せ場は増えているのかもしれないけれど辛抱役でした。

それでも彼の瞳には失われゆく世界への愛惜とか慈しみみたいなものが感じられ、その芝居を支える力の素晴らしさを、わかってはいたけれど改めて深く知らされることなりました。
真ん中にいながらも抑えるさりげない芝居というものを体験できたのは、これからのトップ人生に大いに生かされることとなると信じています。


どの人たちもそれぞれにとても印象的で、柴田先生の脚本の素晴らしさ、謝先生の演出の上手さ、そして雪組メンバーの芝居の確かさが感じられました。