月刊☆臥看牽牛織女星

15年の空白を経て宝塚観劇を再開。失われた時を取り戻すためのスカイステージ鑑賞記録をぼちぼちと綴ります。

素顔のままで「Beautiful Tommorow!」

月

阪神淡路大震災が起きた時、私は西日本にいた。
震源地からは遠く離れていたので明け方揺れて目が覚めた程度で被害はなかったが、朝起きてニュースを見て関西の状況を知った。

東京の本社に電話をかけ、新幹線も道路も何もかも大変なことになっているし当分そちらには行けないと言ったのだけれど、まだ状況が伝わっていないのか頭の中が真っ白になった私の説明が要領を得なかったのか本社の人はいたってのんびりとした反応だったことを覚えている。
そうだ思い出した。東京にいる政治家の一部ですらまだ危機感がなく、その日の朝、どこかの政党から離党するとかなんとか大騒ぎしている議員達がいたよなぁ。それどころじゃないだろうにお前ら(怒)と思った記憶が。(そいつらの名前今も覚えてるぞ!)
日本の各地で大きな災害が続く今、さすがにあの時のようなことはもうないと信じたいが。


さて、宝塚はその時ヤンさん(安寿ミラ)のサヨナラ公演中だった。
大劇場、バウホールは閉鎖。ヤンさんは大劇場にさよならを告げられぬままで、次の月組公演は結局上演されなかった。
それでも被害が比較的少なかったバウホールで震災のたった2ヶ月後、大劇場公演の代わりとして急遽このミニコンサートが行われたという。

まだまだ震災直後といってもいいほど大変な時だ。
でもみんな若く明るく元気いっぱい。
そう、こんな時だからこそ明るく元気に歌い踊ることは
演じる側にとっても、
観に行くことができた人にとっても、
そして観に行くことはできない状況の人にとっても
心の支えとなっていくのだと思う。

もう花組以外の公演はあまり見なくなってしまっていたので、これは今回のCS放送で初めて見ました。
Jポップにスタンダードナンバーに月組演目の主題歌に、三木先生らしくごちゃまぜの盛りだくさん。
まぁ、急遽上演されたものなのでそんなに凝った演目ではないけれど、それだけ素顔に近い感じ。


いや。
ゆりちゃん(天海祐希)がね。
いつでも素顔のまま、みたいな感じのトップさんだもんね。
先週CS放送で見た「SAUDADE」でのあさこさん(瀬奈じゅん)の男役極め具合と比べると、もう全然男役とは言えないくらい。
お顔もスタイルもまだぷくぷく。所作も声も女の子のまんまだ。
そりゃそうだよ。まだ新人公演学年なんだもん。
同期のずんこ(姿月あさと)が新公でゆりちゃんの役をしてるんだもん。そっちのほうが普通。

正直、もっと後にトップになっていたなら、どんなに素敵な男役さんになっただろうって今でも惜しく思う。
テレビドラマ「BOSS」のオープニングなんて男前でかっこよかったもんね。もしその年齢の頃にトップだったらきっと惚れ惚れとしたことだろう。もちろん、そこまで宝塚にいたらその後の活躍はなかったかもしれないけど。


ゆりちゃんを初めて見たのは音楽学校の文化祭だった。
その時ですら、もうすでに有名人。
まだ予科生なので制服姿で鼓笛隊の出演のみ。
それでも噂のゆりちゃんとはどんな子なのかと観客は大注目だった。
あのフサフサがついた大きな鼓笛の指揮棒を持って予科生の先頭に立つゆりちゃんは素顔で予科帽の下はおでこ全開なのに早くもスターの輝きだった。
SNSもない時代、音楽学校時代から私のような末端のファンでも噂に聞くくらいの有名人はゆりちゃんとじゅんちゃん(純名里沙)くらいかな。

月組に配属されて何年か経つとむしろ無理に男役を作ろうと思わなくなった感じがある。
何一つ作らないところが逆に魅力的だった。
天性のコメディエンヌで「PUCK」のロバになっちゃうシーンなんて単純なドタバタなのに間が絶妙でえらく面白かった。

そんな生まれ持った華と明るさで、震災2ヶ月後の辛く苦しい時を素直に真っ直ぐに照らしてくれていたのだね。

私は、のんちゃん(久世星佳)が大好きだったし、長い研鑽により磨き上げられる男役芸をこよなく愛していることもあり、あの時は色々思って月組を見なくなってしまったのだが、そんな狭い了見はなんと馬鹿馬鹿しい事だったのかと今は思う。

どんな状況でも立場でも真摯に全力で立ち向かう人は尊い
この不確実な時代、こちらも観劇できる幸せを全力で楽しむべきよね。