月刊☆臥看牽牛織女星

15年の空白を経て宝塚観劇を再開。失われた時を取り戻すためのスカイステージ鑑賞記録をぼちぼちと綴ります。

本日「霧深きエルベのほとり」観劇1

星

昭和の名作中の名作。
平成も終わろうかという今、まさか再演されるとは思いもよらなかった。
私にとって大切な、大切な作品。
この時代にこの作品を蘇らせてくれたことに感謝します。

ワンス・アポン・ア・タイムと副題がついてはいますが、カール、マルギット、フロリアンの主要なセリフは何も変わってないような気がします。新旧どちらも脚本が手元にないので私のあやふやな記憶による限りですが。
でもフロリアンの歌は新曲かしら?ことちゃん(礼真琴)の深く見事な歌唱を十分に堪能できました。

そして、さゆみさん(紅ゆずる)のカール。
大健闘でした。
特に「もし俺が文士だったら。」から始まるモノローグは絶品。
そんなわけでかつて私が観た舞台の記憶とか感動がびっくりするほどよみがえり、想いが溢れてしまって感想なんて書けないの。
なので今回はこの時代に上演するにあたっての変更点を備忘録として書き留めておこうと思います。

変更点1 華やかなオープニング!

カールもマルギットもフロリアンもみ~んなビール祭りの民族衣装なので、カールったら船降りたら即着替えたんかい!!って最初はちょっとびっくりしちゃいましたけど。
芝居のビール祭りではなく、オープニングのショーになっていたのね。
これは宝塚では良くあるパターンなので、すぐに対応出来ましたよ。
大階段を使った組子総出演のパレードは華やかで、テンション上がりました!


変更点2 船乗りたちのキャラ祭り!

かいちゃん(七海ひろき)卒業公演でもあるので、船乗りたちのアレヤコレヤは全面改稿でした。
テンガロンハットを被ったかいちゃんが鼻血出るほどかっこよかった~!
銀橋での旅立ちの歌唱は爽やかに。
これは素晴らしい改変!

それから
あいかわらず間が絶妙で笑わせてくれるせおっち(瀬央ゆりあ)
とっぽい動きに人の良さがにじみ出ているしどりゅー(紫藤りゅう)
もはや至高のヘタレ芸!まお(麻央侑希)
船乗り志望の少年は今回初登場。
実は誰なのかわからなかったのですがカノン(天飛華音)だったのですね。生き抜くエネルギーに溢れた力強い演技でした。

古き良き物語の中、それぞれのキャラが立っていて、楽しいスパイスになっていました。


変更点3 昔の恋人アンゼリカの描かれ方。

以前の脚本にはカールの昔の恋人アンゼリカについて
エルベ川のさざなみのように、いつもまつげを震わせている女」
という表現がたびたびあったと記憶しています。
前回の花組再演時のカミコさん(美野真奈)が演じたアンゼリカも本当にまつげを震わせてビクビクしながら夫の目が届かなくなった僅かな時間にカールに話しかける感じでした。
夫ロンバルトのちーとさん(貴条ともか)はかなりの年上で重々しく、船乗り風情と同席したくないという自分の体面には敏感でもアンゼリカを気づかう様子はありませんでした。

きっとアンゼリカが美しいから再婚したのでしょう。連れて歩くには見栄えがいいですもの。しかし階級の違う妻を無意識に軽んじているような雰囲気が出ていました。
といっても別にDV夫とかではなく、それが当たり前の日常なんですね。
おそらく初演の頃(昭和38年)の日本の女性もアンゼリカのように生活を夫に依存し、夫に遠慮しがちな毎日を送っていた人が多くいたのではないかと思います。


今回の星組版では「いつもまつげを震わせている女」というセリフはバッサリカット。
はるこアンゼリカ(音波みのり)はカールとの突然の再会に動揺するものの、夫の顔色を伺うようなことはありません。

愛する人と別れて身分違いの名家に嫁がなければならなかったけれど、そこからしっかりと自分の人生を切り開いた賢い女性。

「忘れ物を取りに」という言い訳?も夫を恐れてではなく、気遣いだったように思います。
夫のロンバルドも妻が過去に心から愛した人(「忘れ物」ですね。きっと。)がいると気づいていて、でも彼女のカールに対する想いごと深く愛していることが伺えました。
ロンバルトのレオさん(輝咲玲央)は少ない出番ながら素晴らしい包容力を見せていましたね。

これは今の時代にしっくり来る改変であり、と同時に実に上田久美子先生らしいなぁと思いました。