月刊☆臥看牽牛織女星

15年の空白を経て宝塚観劇を再開。失われた時を取り戻すためのスカイステージ鑑賞記録をぼちぼちと綴ります。

本日「ハリウッド・ゴシップ」観劇1

雪

諦めていたところ、心優しいヅカ友さまにお譲りいただきました。
そう。本当は12日の観劇予定だったんです。

被災地近くに知り合いもいて、しかも全然別々の離れた地域に住んでいるのにそれぞれに被害の報道がありとても心配しました。あの日、避難所で一晩を過ごした友人や川の近くに住んでいて氾濫ギリギリだった知人もいましたがみな無事で日常を取り戻せています。
被災された方の苦難を思うと辛いのですが、非力でアレルギー持ちではボランティアも難しいので、とにかく元気に働いて、元気に消費して、せっせと税金を払います。

が、その前に急遽年休をいただき本日の観劇となりました。
だって元気に働くためには宝塚という栄養がいるの!
こういうときだからこそ歌舞音曲は必要!


さて、1920年代ハリウッドを舞台としたこの作品。面白かったです!
見に行けて本当によかった。


田渕大輔先生は、人の愚かさ、弱さを描いた作品が多い気がします。
「異人たちのルネサンス」も周りは悪人?だらけでしたね。「サンクチュアリ」もそうでした。「相続人の肖像」にいたっては主人公がなかなかのクズ男だったし。
完全無欠のかっこいい理想の男性を観たい人にはイマイチかも知れませんが、悪役・ダメ男大好きな私にとって、結構好きな演出家さんかも。


咲ちゃん(彩風咲奈)演じるコンラッドはなかなか芽が出ないエキストラ俳優。
こんなに足が長くてイケメンで踊れるのに、それまでなにゆえオーディションに落ちまくってきたのか不思議なくらい。

でも、その理由は物語後半になって良くわかりました。

彼はとても普通の青年なんです。
スターになってちやほやされるのを夢見るところも。
チャンスを掴んでちょっと有頂天になるところも。

普通の人間なればこその小ささ、弱さ。
そして普通の健全な心にしたがって最後に踏みとどまる強さ、そして優しさ。


「この門をくぐるものは一切の希望を捨てよ」

この物語をみて、ふと思い出したのがダンテの「神曲」のこの言葉。
特に二幕は、若者の地獄めぐりのような内容でした。

それまで彼をオーディションで落としてきた映画関係者には彼がハリウッドという地獄の住人には決してなれないことが見えたんでしょうね~、きっと。


しかし地獄の住人、往年の大女優みとさん(梨花ますみ)の策略に乗ったことであっという間に大きなチャンスを掴みます。

みとさん。すごかったわ。
もしこれが宝塚の舞台じゃなかったら、完全にみとさんが主役でしょう。
ぜひ大竹しのぶに演じて欲しい。

窓の外の嵐を眺め、がらんとした暗い屋敷の中にひとり佇む後ろ姿の存在感。
そして雷の閃光に浮かび上がった彼女の顔に残る黒々とした涙のあと。
「ようこそ。ハリウッドへ」
凄まじくも哀れだったわ~~。
まさに地獄の門が開いた瞬間だったわ。


もうひとりの地獄の住人、若手スターの凪様(彩凪翔)。
芝居が上手い人だとは思っていたけれど、さらに凄みが加わって異次元のかっこよさ!
スターとしての輝き、それから人間の弱さや高いプライド、そして坂道を転がり落ちるように壊れていく様。
それらすべて同時に表現できる演技力と華やかさの両立にひたすら感服。


さて、そんな強烈な地獄の住人に囲まれた咲ちゃんですが、普通人でありながらちゃんと主役として成立させた真ん中力にちょっと驚かされました。


芝居の終わり方もとても好き。
地獄めぐりから無事に生還して、寂れた、でも人のぬくもりが感じられるダイナーに現れる咲ちゃんのすがすがしさよ!

「この門をくぐるものは一切の希望を捨てよ」
そう、彼は本当の希望を捨てなかったからこそ地獄の門をくぐってしまうことがなかった。
普通だけど、でもそんななんの変哲もない日常が普通じゃなくってとってもキラキラしたものに感じられるカウンターでのデュエットダンス。
とても素敵なラストシーンでした。

良い芝居だったわ。