月刊☆臥看牽牛織女星

15年の空白を経て宝塚観劇を再開。失われた時を取り戻すためのスカイステージ鑑賞記録をぼちぼちと綴ります。

儚きは美しく尊し「A Fairy tale -青い薔薇の精-」

花

はい、当然ながらチケット手に入りませんでしたわよ。
みりおちゃん(明日海りお)サヨナラ公演が早くも放送。ありがとうスカステ!

結末とか知りたくないからネットの感想は見るまでは読まないように気をつけていたんだけれど、それでもなんとなくビミョーな作品っぽいという噂は耳に入っておりました。

でも、テレビ鑑賞の気軽さのせいでしょうか。面白かったです…そう、4分の3をすぎるくらいまではかなり。
そこまでは結構スリリングで、どうなるんだろう~~って引き込まれました。
残りの4分の1くらい、ラストの庭のシーンがね。ちょっと間延びしてたかしら。
一つ一つのセリフや歌唱はとても納得がいくものではあるのだけれど、それが場面展開もないまま何段階にもわたって繰り返されるが蛇足感というか興ざめ感というか。この辺がビミョーな評判の原因なのかも?

とはいえ、この作品をつまらないとは思わなかった。
ま、景子先生の世界観が割と好みなんですね。


まず、装置が好きです。ってそこかい!
なんか毎度言ってますが。
やはり松井るみ先生でした。

昔は背景に書割の絵がドドーンっていうのが定番でしたが、景子先生は過去の作品をみても構造物を前後に配置して簡素ながらも遠近法で立体的に見せる手法をよく取っているように思います。

今回も柱が林立した駅の装置とか花々が描かれたアーチ状の構造物が幾重にも重なった庭の装置が美しかったわ。
どちらも一点消失の遠近法の効果で奥行きを出しています。
その一つ一つの柱や花のアーチは写実的に緻密に作られているけれど全体の空間表現は抽象的。
この想像を掻き立てるような余白のある世界観が好き。
もし生の舞台を観ることができたら照明の効果も相まってきっともっともっと美しかったと思う。あ~観たかったな~。


それからね。
なんといっても、まいてぃ(水美舞斗)としろきみちゃん(城妃美伶)ですよ。
この二人。美しすぎる~~~~。

まいてぃの表情に幸せとか切なさとか色んな感情が含まれていて、それをぐっと自制している姿が美しいのなんのって
あ、ちなみに「アルジェの男」におけるアンドレの私の理想のイメージって、正にこういう庭師なんですよ!
抑制する愛、大好物。

そして、しろきみちゃんも綺麗だった~~~~!!!
知的で温かみがあって、しっかりとした骨格が西欧的で。
その微笑みは、そう!聖母マリアのよう。
まいてぃにとって、けっして触れる事の出来ない、けれどもそれ故に特別な特別な存在である事も納得の美しさと尊さ。
あぁ~、しろきみちゃん。大好きでした。
退団公演観たかった。ほんと観たかったよぉ。


えみちぃ(乙羽映見)の謎の貴婦人。
その謎はよくわからないけどそれがなんだか素敵でした。
そういえば「ラストタイクーン」で演じたシュッとマッチを擦ってストーブに火を灯す女性も謎めいた雰囲気でしたよね。あれ、好きだったな~。想像力を掻き立てられる。そしてそれが謎のままであることが美しい。
独特の個性のえみちぃ。
その歌声も芝居も大好きでした。


精霊のあかりさん(白姫あかり)。
長身娘役ダンサーとしていつも伸びやかな姿を見せてくれていました。
特に「愛と革命の詩」のデュエットダンスが好きだったわ。
今回は卒業ということもあり台詞もいっぱいありましたね。
美しいスカートさばきは花娘の真骨頂。
そのダンサーとしての矜持はともに精霊を演じたなっち(更紗那知)に引き継がれていくのですね。
でも、まだまだあかりさんのダンスが観たかったなぁ。


くみちゃん(芽吹幸奈)は女中頭かな?「日の名残」のエマ・トンプソンのような存在。
正直これまでくみちゃんの芝居に感心したことはあまりなかったんだけど、今回は本当に本当に素晴らしかった。
上品におっとりと慈愛に満ちながらもくっきりと演じていて、シャーロット(華優希)の幸せな子供時代を構成する重要な存在となっていました。
あぁ、残念だぁ。こんなに素敵な芝居が出来るのに退団なんて。


そして、みりおちゃんの青き薔薇の精エリュ。美しいのは言わずもがな。

精霊なもんだから、人間の心ついては色々わからないことも多くて、ちょっとずれたところが愛らしい。
そして精霊といえども、そこそこ傲慢なところがあったりするのが意外に人間っぽい。
結構好きです。とても面白い造形。


タカラジェンヌはよくフェアリーなんて表現されるけれど、それは外見だけのことじゃないですよね。きっと。
なんていうか、
この世ならざるものであるような、でも、どこかに居てくれるような。
そして目に見えていたかと思えば、ある日を境に夢のように失われてしまったりもする。
それがどんなにかけがえない時間であっても時を止める事は出来ない。

我々にとってそんな存在であることが、この芝居の中にうま~く表現されていて、あぁやっぱりサヨナラなんだなぁ。なんて儚くって、なんて美しくって、なんて尊いんだろうって、しみじみ感じた美しい物語でした。