月刊☆臥看牽牛織女星

15年の空白を経て宝塚観劇を再開。失われた時を取り戻すためのスカイステージ鑑賞記録をぼちぼちと綴ります。

その背景がちゃんと見えた「霧深きエルベのほとり」新人公演

星

「霧深きエルベのほとり」新人公演をCS鑑賞。
思いの外、良かったです。
そりゃぁもちろん新人公演ですもの、私が昔見たミッキー(順みつき)のサヨナラ公演と比べてしまったらもうどうにもなりませんけど、大健闘だったと思います。


かりんちゃん(極美慎)のカール。
心の奥の哀しみが表現できていたことが秀逸。
この人の個性なんでしょうか?「アルジェの男」のアンドレでもそうだったんだけれど、悲しみをぐっとこらえた佇まいが似合いますね~。細い肩がいいのかなぁ。
ひょろひょろと華奢であることはダンスでは形が決まりにくくて時に不利な面もありますが、こういう切ない芝居においては独自の個性としていい方向に作用しています。


ゆりちゃん(水乃ゆり)のマルギット。
アホの子に見えなかったことは良かったです。
技術的に未熟ではあるけれど、生き方や愛する人を自分の心に従って選びたいという想いは感じられました。ここは大事なところよ。
そういう意思が見えてこないお人形さんでは彼女のことを愛しているカールとフロリアンまでもが底の浅い人間に見えてしまうもの。
どこが好きなの?やっぱ顔?なんてね。
まぁラブロマンスなんて大抵が一目惚れだからそれでもいいんですけど。


ぴーすけ(天華えま)のフロリアン
知性的な彼はマルギットの家出の理由をおそらく本人よりもちゃんとわかっていますね。
愛するマルギットが最も望んだこと、それは上流階級の古い価値観から自由になること。
どれほど愛していても上流階級の家系を守り続ける責任がある立場では彼女が最も望む自由だけは叶えてあげられない。
自分の幸せとマルギットの幸せが同時には成り立たない事を既に知っているなんて辛いわ~~。

ただ、こういう理性的で誠実な役、ちゃんと上手いのはもう目に見えているもん。
容姿も技術も問題なしの優等生にとって、この先一番欲しいものは意外性だと思う。
どうか劇団の皆様。ぴーすけに色悪とか黒幕とか、新たな一面が見られる役をぜひお願いいたします。


マルギットの継母を演じたさきちゃん(澪乃桜季)。
良い芝居でとても印象に残りました。

マルギットは父が彼女と結婚するために母を追い出したと思い込んでいましたし、マルギットの父は出ていった元妻を悪しざまに言います。が、このさきちゃん演じる継母は同性であるがゆえか、その深い人間性によるものなのか、マルギットの母の不倫の恋が真実の恋であったことを理解していたように思えます。おそらく娘を置いていかなければならない苦しみも知っていたことでしょう。
だから、彼女はカールの愛想尽かしが彼の本心からではないことも感じ取っていたのではないかしら。
なんとも切ない表情でカールを見つめていましたね。
マルギットの実母もかつてそんな風に自分が悪者となって家を出て行ったのかも知れません。
だからカールがそんな悪い人間ではないことを一番わかっていたのが彼女だったのかも。
そういう背景が一瞬でこちらに伝わってくるような眼差しが素晴らしかった。


星組若手メンバーたちの真摯な役の捉え方にとても好感を持てた新人公演でした。