月刊☆臥看牽牛織女星

15年の空白を経て宝塚観劇を再開。失われた時を取り戻すためのスカイステージ鑑賞記録をぼちぼちと綴ります。

アンビバレントな三人「FLYING SAPA ーフライング・サパー」LIVE配信3

宙

キャスト感想がすっかり後回しになっちゃいましたが、もちろん宙組の皆様、素晴らしかったです。
現在のような状況下でなおかつ極限状態を描いた作品ということもあったのでしょう。宙組メンバーの役へのハマり方には鬼気迫るものがありました。

大人度が高くスタイリッシュな宙組なればこそ、この先鋭的な「FLYING SAPA」を見事に作り上げることが出来たのだと思います。

ゆりか氏(真風涼帆)

白いロングコートやざっくりとしたニットの着こなしが格好良すぎて見惚れます。
深く被ったフードの下から覗く鼻筋とフェイスラインの美しさがまるで洋画を見ているよう。

大人の男の翳り、気だるさ。
色気も重厚感もあるのにそれと同時にクスッと笑わす間も上手くてどこか飄々とした味も出せる。
不器用なんだか器用なんだか、なんとも複雑な色合いの人ですよね。
SFというある種ありえない尖った世界を人間の真実の物語に昇華させる事ができるのは芝居力はもちろん、人間としての厚みもあるんだろうなぁ。と感じました。
「FLYING SAPA」は間違いなくゆりか氏の代表作といっていいですよね。

まどかちゃん(星風まどか)

一見愛らしい少女の外見を有しているからこその痛々しさが表現されており、これはアテガキのうまい上田先生ならではの造形の妙。
今回は得意の歌を封印された世界なので、演技だけで真っ向勝負。
しかも精神的に最も苦しい役だったと思います。
ラストに笑顔を見ることが出来て本当に良かった。
その笑顔には大人の女性の強さや優しさが加わっていて、もともと技術の高い娘役さんではあったけれど、さらなる高みに登りつつあると思います。
凄かったです。

キキちゃん(芹香斗亜)

古い地球の多様な文化はすべて禁じられて歌も歌えない世界なのですが、ゆりか氏とまどかちゃんが少しずつ心を通わすシーンでキキちゃんが優しい歌を静かに口ずさんでくれます。それがものすごく心にしみるのだ。

しかしこの人の包容力には不思議な力があるわ~~~。
ひと昔前の宝塚だったら包容力のある男役といえば、俺について来れば大丈夫!的な強さと優しさであったり、あるいは渋い大人の男の余裕だったりしたわけですが、キキちゃんはそのどちらともちょっと違う。
かと言って何もかもただ無条件に受け入れてくれるだけの優男とも違う。
何と言えばいいのだろう。

高い熱量の炎は赤ではなく青くなるように外から見ればとても静謐なのだけれど、おそらくその心の中には狂おしいほどの熱さがあるんだわ。
そしてその情熱をぐっと自制しているのは、己のプライドとかエゴからじゃなくて相手を強く尊重する想いからのように見えます。
なにかとても崇高なものを見つめるような眼差しが優しいのだけど、でもその奥には切羽詰まったような切ない翳りも秘めていて本当にドキドキします。

こんなに知的で深い男性にそんなふうに見つめられている相手役さんは更に更に素敵な女性に思えてくる。
男役をかっこよく見せるのが娘役のスキルなんて長年言われてきているけれど、キキちゃんは娘役さんを素敵な女性にしてくれる男役なんだよね。現に相手役のもってぃ(夢白あや)は本人の好演ももちろんあったけれど、とても輝いて見えました。
そしてそんな素敵になった娘役さんが共に並ぶことでキキちゃんが更にかっこなるという、さながら永久機関のようにぐるぐるとトキメキの好循環が生まれるわけです。

キキちゃんは品があってクラシカルだけれど、同時に今の時代の男女の在り方にしっくりくる包容力を持ったとても現代的な男役さんのように思います。