月刊☆臥看牽牛織女星

15年の空白を経て宝塚観劇を再開。失われた時を取り戻すためのスカイステージ鑑賞記録をぼちぼちと綴ります。

懐かしの新人公演特集9

専

観劇ブランクで失われた15年を取り戻すべく、引き続き懐かしの新人公演をぼちぼちとCS鑑賞中。タイトル/組/主演/作演出/新公担当演出として記録します。

「ホテルステラマリス」/宙/七帆ひかる/正塚晴彦/稲葉太地

えりこちゃん(七帆ひかる)はスタイリッシュな宙組生の中でもひときわ目立つ長身。ちょっと皮肉屋さんっぽいインテリ役が似合うクールなお顔立ち。
残念ながらその舞台姿を見たことはないけれど、これまで出演した作品をいくつかスカステで見てます。まゆさん(蘭寿とむ)主演の小劇場公演でもよくコンビを組んでいたっけ。どの役でも、とても強い印象を残す男役さんでした。
15年の観劇ブランクの時期に活躍され、スカステで見て素敵だなぁと目を引いた方はたくさんいらっしゃいますが、なかでもその早い退団がとりわけ惜しいと思った人です。
新人公演主演もしていたのね。
この時はまだ芝居は硬いところがあるけれど、これからどんな風に成長していくんだろうってすごく楽しみになる感じ。
男役として完成を迎えた姿を見てみたかった。

さてさて男役としての完成を見届けることができた人達の新人公演時代も面白い。
チギちゃん(早霧せいな)はまだ頬がぷくぷくだけれど、ぐっと大人っぽくなってきているわ。
正体を表した時のナルシストっぷりがかっこいいやら可笑しいやら。芝居の反射神経のよさはこの頃からさすが。
そして、茫洋としたまさこ(十輝いりす)がはまり役!笑ったわ~。

マラケシュ・紅の墓標」/花/朝夏まなと/荻田浩一

まあくん(朝夏まなと)初主演。2番手や3番手の役の経験なしにいきなり主演だったの?
難しいけれど演じ甲斐のあるすごくいい作品に大抜擢。
長い手足をもてあますヒョロヒョロのまあくんが可愛い。
あれだけ長いと自分でも置きどころがわからないのかぁ。この羨ましいほどの長い手足を活かせるようになるのにも研鑽が必要なのね。

そしておささん(春野寿美礼)のために作られたとんでもない難曲。音域がもはや男役のそれではないし声の響きなんてまるでオーボエとかクラリネットのよう。
こんな誰にも歌えないような曲をよく歌いきったわ。
盛大に声が裏返っちゃってましたけれど、新人公演はむしろそのほうがいいんです!
深い男役の声のままで地声と裏声の境目を上手につなげられるようになるためには、ひっくり返ることを恐れずに肺から喉まで全開で歌ってみるべきだと思うの。自分のコントロールの範囲内で歌ったらいつまで経っても小さく固まったまま。広い広い劇場で歌えるようになるためにはたった2回しかないこのチャンスに勇気を持って限界突破していかなきゃ。
たとえこの時点でまだうまく出来なくてもいいじゃない。失敗したり、思うようには出来なかったり、いろいろあるわよ。でもその経験、その努力から得るもののほうが大きいのだもの。

まあくんは最初からなんでも上手いというタイプではなかったけれど、いろんなことを克服していって、ついには技術的にも華やかさも申し分のない素敵なトップスターになった。
そのスタートを見ることができて嬉しいわ。
これこそが新人公演の醍醐味だと思う。

「長崎しぐれ坂」/星/柚希礼音/植田紳爾/鈴木圭

チエちゃん(柚希礼音)がついに翳りのある男の色気を手に入れた瞬間です。
いしさん(轟悠)の役だったのね。おそらく今まで演じたことのない無頼の色男。これまでの若さとパワーだけでは太刀打ちできない役でしたがびっくりするほど色っぽかった。
ついにここまで来たか~。感動。
観劇ブランクで見のがしたチエちゃんの成長の過程をこうして後追いすることが出来て嬉しいわ。

わたるくん(湖月わたる)の役はまひろちゃん(麻尋しゅん)。
かっこよく作られた役じゃないんだけれど、ちゃんとトップスターの役としての存在感があった。しかもこの難しい役の心情を細やかに演じていてすごく感動した。
お顔立ちがまおさん(大地真央)、まりこちゃん(麻路さき)の系統だから劇団が絶対ほっとかない人だよね。その上これだけ芝居が出来るなんて。
その早い退団は惜しいけれどこれからの星組新人公演の放送も楽しみだな。

オープニングでのみなみちゃん(南海まり)の芸者姿が艶やかで眼福。
首が長く高身長なのでタレがそのまま下がってる帯結び(やなぎ結びというらしい)がすごく似合っている。まさに江戸の芸者の粋。大人っぽくなったな~。

「霧のミラノ」/雪/凰稀かなめ/柴田侑宏・中村暁/小柳奈穂子

テルキタ来た~~~~!
後に宙組で再び共に芝居をし一緒に退団したテルことりかさん(凰稀かなめ)とキタさん(緒月遠麻)。
雪組時代に新人公演でこうやってガッツリ組んで芝居していたのか。なるほどね~。
そしてキタさんの芝居の上手さよ。もうこの頃から渋い男っぷり。
でも軍服を脱ぐ後ろ姿がどことなく女性っぽいのがまだ新人公演学年なのだな。
こういうなにげない動作で男の背中の色気を感じさせるようになるまでにはまだまだ長い道のりがあるのね。

最初の方のバルの場面で壇上のテーブルに座っているのは男役時代のせーこ(純矢ちとせ)だわ!めっちゃ男前!
ひめさん(舞咲りん)はガンガン歌いまくり、男役せしこ(大湖せしる)や、がおちゃん(香綾しずる)がちらちら出てきたりで、いよいよ観劇再開後に主要メンバーだった人達が活躍し始めましたよ!

「炎にくちづけを」/宙/和涼華/木村新司/大野拓史

陰惨で残酷なTHE中世。
かなり後味の悪い作品ではあるのですが、ガイちゃん(初風緑)が演じた冷酷な伯爵が大好きで新人公演では誰が演じたんだろうって楽しみにしていました。
えりこ(七帆ひかる)だったのね!これは嬉しい配役。だけど難役。
なにせガイちゃんの歌声もすみれさん(春野寿美礼)と同様に男役発声を超越し木管楽器のようなまろやかさ。そんな不思議な響きのまま低いところから高いところまで上がっていくんだもの。
この芝居でも戦いの中、下から照明が当てられたセリの上で歌う曲がそういう響きたっぷりで音程も音量の調整も激ムズの難曲。
えりこはガイちゃんの声の出し方をかなり研究していて豊かな響きが出せていました。この曲大好きだから嬉しかったわ。
風貌といい、冷静で明確な芝居といい、本当に見事な新人公演集大成でした。
あぁ、この人の男役として完成を迎えた姿を見たかったよ。
オーシャンズ11」のダニーとかどう?知的でちょっとシニカルな伊達男なんてきっとピッタリじゃないかな~。

ヒロさん(一樹千尋)が演じた主人公の母親。新人公演ではたっちん(和音美桜)が演じてました。まさかの配役。
そして異次元のクオリティ!
この芝居をエグいものにしている一因がこの母親の存在なのですが、たっちんは母性が感じられる役作りでヒロさんほどエグくはないです。それでも人の心の矛盾、やりきれなさが感じられてとても悲しく、そして恐ろしい。歌の情感。中音域の豊かさ。ほんとうに素晴らしい!
ただ正直いって、たっちんをヒロインとして育てるつもりがあったのなら、どんなに素晴らしい出来であってもこの役を演じることはマイナスでしかなかったんじゃないかとちょっと切なくなる。
ヒロインとしてのイメージの積み重ねがトップ娘役を育てる。そして一度ついたイメージはなかなか覆すことはできない。新人公演でゾフィーを演じて娘役トップになったのは今のところゆきちゃん(仙名彩世)ただ一人なんだよね。あいあい(城咲あい)は限りなく近かったのにそれでも届かなかった。こういうタイプの役を演じ、しかもそれで強い印象を残すと可憐なヒロインとしてのイメージ戦略は難しい。
たっちんは美しくってなおかつ稀有な才能の持ち主だからてっきり最初から路線娘役だとばかり思ってた。なんでトップ娘役になれなかったのか不思議だったのだけれど、はじめはこういう役を演じていたのかぁ。